橈骨動脈からの脳血管内治療

より低侵襲な治療を目指して

脳血管内治療を行うためには,数mmの切開を加えて動脈を穿刺する必要があります.
 従来,脳血管内手術は主に大腿動脈(足の付け根)から行っていました(図1).それは血管の構造の関係上,より直線的に病変部に到達できるため,カテーテルの操作性が最も優れているからです(図2-3).しかし,止血のために半日程度の臥床安静時間が必要となり,これが患者さんの苦痛の原因になっていました.一方,循環器内科領域では橈骨動脈(手首の血管)からの治療が広く行われています(図3).最近では,脳血管内治療領域でも,橈骨動脈からの脳血管内治療の報告が散見されるようになりました.そこで,当院でもより低侵襲治療を目指して,橈骨動脈からの脳血管内治療を開始いたしました(図4-7).通常は,右橈骨動脈を穿刺して治療を行います.術後の安静は右手首のみとなりますので,術後から歩行が可能です.当院では,全身麻酔で手術を行った場合は術後3時間程経過してから,状態を確認して歩行を許可しています.
 現在,最善の治療が可能かどうかを充分に検討した上で,なるべく侵襲性が低い橈骨動脈からの脳血管内治療を第一選択するように心掛けており,患者さんにより負担の少ない治療の実現を目指しています.

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図1:右大腿動脈(足の付根)を穿刺したところ
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図2:大腿動脈アプローチは,病変部に直線的に到達することができる
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図3:右橈骨動脈(手首)
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図4:右橈骨動脈を穿刺した
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図5:右橈骨動脈からカテーテルを挿入する(矢印)
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図6:カテーテルが右頚動脈に到達した(矢印)
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図7:右頚動脈にステントを留置した(矢印)